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マルガレーテは長年連れ添った夫ロイズルの葬儀を済ませ、人生の新たな一歩を踏み出そうとしていた。

彼女は40年前に夫とドイツ南東部の州バイエルンからカナダの広大なビッグベア・クリークに移住し、自然に囲まれた住み慣れた我が家で幸せに暮らしていた。長女マリーは母が遠く離れた一軒家で一人暮らしをするのが心配で、両親の家を売却し、自分たちの住む都市部のホワイトホースへ呼び寄せることにした。

マルガレーテはマリーの家で一緒に暮らせるものと思っていたが、マリーは彼女に新設の老人ホームを勧め、みんなで行くと約束をしていたローマ旅行もうやむやにされてしまう。敬虔なカソリックの信者であるマルガレーテには、どうしてもローマ法王(教皇)の前で懺悔したいことがあったのだ。

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ある朝、マルガレーテは置手紙を残して、単身ローマに旅立った。

14時間の空の旅。ローマに住む孫娘マルティナの家に転がり込んだマルガレーテは、さっそくバチカンへ向かった。長年夢にまで見た、憧れの場所。だが、法王と会うのは簡単なことではなかった。

集団謁見の日に再訪したマルガレーテはそこで大事件を起こしてしまう。盲人を装って法王に会おうとしていた老詐欺師を懲らしめようと、持っていた護身用のスプレーを吹きかけたところ、それが法王を直撃してしまったのだ。しかし、逮捕され、尋問を受けるマルガレーテを救ったのは盲人を装っていたイタリア人ロレンツォだった。彼は警察に事件はすべて自分のせいだと説明し、マルガレーテは釈放される。

一方、マルガレーテはロレンツォの甥ディノとも不思議な縁で出会っていた。ディノの母親はドイツ人で彼らはローマでバイエルン料理店“リセロッタ”を経営していたが、ディノの作る料理はあまりにも不味く、店は倒産寸前だった。最初は客として来店したマルガレーテも、あまりにひどい料理に自ら厨房で料理を作り始めてしまう。やがてマルガレーテはその店のシェフとして働くことになり、彼女の作る料理は大評判となって店は一気に繁盛する。

story2

法王襲撃犯として国際ニュースにまでなった母を心配して娘マリーもローマへやってきた。孫のマルティナは恋人とのトラブルが発生して傷心気味。ロレンツォとディノにも予期せぬ不幸が訪れ、マルガレーテはなぜロレンツォが人をだましてまでも法王に会おうとしていたのか初めて知った。

傷ついた人々の心を癒すのは、やっぱりマルガレーテの優しい心と美味しい料理。そして、彼女は40年間家族の誰にも話したことのない秘密をマリーに明かす。だが、その秘密のあまりの衝撃に母と娘は大喧嘩を始めてしまう。

そんなとき、マルガレーテのもとにバチカン教会から、法王をはじめ100人分のカイザーシュマーレンを作ってほしいと依頼が入る。母、娘、孫の3人は、無言のまま力を合わせてその甘く懐かしい家庭の味を作りはじめるのだった…。

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